CentOS 8.3 を AlmaLinux 8.3 にしてみた

0. してみた結果...

CentOS 8.3 がインストールされたマシンを AlmaLinux で用意されている移行ツールを用いて、AlmaLinux 8.3 に移行してみたところ、特に問題なく移行できた。 今回、GUI (GNOME) 環境を持つサーバーを移行したが、デスクトップの壁紙、ロック画面などは、CentOS に比べかなりポップな感じになった。

f:id:va-heimin:20210413130800p:plain f:id:va-heimin:20210413130710p:plain f:id:va-heimin:20210413130837p:plain

もちろん、移行後も NFSD サービス、HTTP サービスなど問題なく使用できている。

ただし、運用中のサーバーで、パッケージのバージョンに変更があると問題がある場合には注意が必要。 移行には、dnfコマンドの...  続きはのちほど。


執筆者: 森田 千葉彦


1. はじめに

2020年12月8日に、CentOS 8 のサポートが 2021年12月31日で終了し、CentOS Stream 8 へ移行すると発表があった。 Red Hat よると、CentOS Stream は以下のようなものとされている。

  • 安定志向のディストリビューションで、将来の RHEL に含まれる予定のソフトウェアが各種のテストを通過した場合のみパッケージが更新される。
  • RHEL との違いはパッケージのリリースタイミングが随時行われるローリングリリースモデルである。
  • RHEL のようなマイナーリリース (8.2や8.3など) は存在しない。
  • yum リポジトリには最新のパッケージしか含まれない。
    (同様に、source パッケージ、debuginfo パッケージも最新の一世代しか公開されない*1。)

上記から考えると、CentOS Stream 8 の位置づけは RHEL 8 のアップストリームとなり、fedora と RHEL の中間に位置する感じとなる。


1.1. CentOS の代替

上記のように、CentOS Stream 8 は RHEL 8 のクローンではない。CentOS 8 の利用者は、以下のいずれかを選択することになる。

  • CentOS 8 以外の RHEL 8 のクローンに移行する
  • (RHEL 8 のクローンではないが) CentOS Stream 8 に移行する
  • Ubuntu など別 (RHEL 系以外) のディストリビューションに移行する

CentOS 8 以外の RHEL 8 のクローンへの移行だが、CentOS 8 の CentOS Stream 8 への移行の発表のあと、 CentOS 8 の後継として、Rocky Linux と AlmaLinux プロジェクトが立ち上がっている。 現状、CentOS 8 (RHEL 8 のクローン) の代替になると思われるのは、この2つと Oracle Linux となりそうである。

AlmaLinux と Oracle Linux は、既に 8.3 をリリースしているが、残念なことに、Rocky Linux は 3月末の時点で、 8.3 のリリースを 4月末に延期することを発表している。いま直ぐ移行を行うなら AlmaLinux か Oracle Linux を選ぶしかない。

また、CentOS Stream 8 に移行する場合、サポートの終了時期の考慮が必要となる。 CentOS Stream 8 のサポート終了は 2024年5月末 *2 となっており、これは 2024年6月末の CentOS 7 のサポート終了と重なるかたちになり、 CentOS 7 と CentOS Stream 8 が、ほぼ同時にサポートが受けられなくなることを意味している。

悲しい事に、もし今から、CentOS 7 ⇒ CentOS 8 ⇒ CentOS Stream 8 と移行すると、サポート期間が1か月短くなってしまうことになる。

上記を考えると、2024年5月末以降もサポートが必要な場合、CentOS Stream 8 への移行は選択肢から消えることになる。


1.2. 代替の候補

CentOS 8 の代替となりそうなものは、 AlmaLinux 8 と Oracle Linux 8 それと現在準備中の Rocky Linux 8 となる。 それぞれ箇条書きで簡単に説明しておく。

AlmaLinux
  • 公式サイト: https://almalinux.org/
  • プロジェクト: CloudLinux (旧 Project Lenix)
    (コミュニティ主導型、フリーなオープンソースプロジェクト)
  • ”Alma”は、ラテン語で魂の意味
  • AlmaLinux は、米 CloudLinux 社の開発者が構築および保守
    (スポンサーとして年間100万ドル)
  • CloudLinux 社は、RHEL をベースにした「CloudLinux OS」の開発元。
    RHEL のフォーク実績は10年以上。
  • AlmaLinux 8.3 は、2021年3月30日に正式リリース
    (8.3 rc 版は、2月中旬からリリースしていた)
  • CentOS からの移行ツールも用意されている(開発中、随時更新あり)
  • ミラーサイトも既に75存在し、内の国内のミラーサイトが6つ (下表参照) となっている (2021年4月14日現在)
Name Sponsor Status Country HTTPS HTTP RSYNC
almalinux.japan.crexio.com CREXIO ok Japan Mirror
mirror-jp.almalinux.id HostKita ok Japan Mirror Mirror
ftp.riken.jp RIKEN ok Japan Mirror Mirror Link
mirror-conoha.almalinux.tokyo TRIPPYBOY.COM ok Japan Mirror Mirror
ftp.iij.ad.jp Internet Initiative Japan Inc. ok Japan Mirror Mirror Link
mirror.almalinux.asia TRIPPYBOY.COM ok Japan Mirror Mirror
Rocky Linux
  • 公式サイト: https://rockylinux.org/(https://rockylinux.org/ja/)
  • プロジェクト: Rocky Linux Project
    (コミュニティ主導型、フリーなオープンソースプロジェクト)
  • GregoryKurtzer (CentOS の創設者)が率いて立ち上げたプロジェクト
  • 独自のスポンサー (AWS, Mattermost など)
  • Rocky Linux 8 の2021年3月31日リリースは3月31日当日、 4月末に延期と発表あり。
Oracle Linux
  • 公式サイト: https://www.oracle.com/linux/ (https://www.oracle.com/jp/linux/)
  • RHEL 8 のクローンが公開されている
  • カーネルのデフォルトは、Oracle 製品に最適化した Unbreakable Enterprise Kernel
    Oracle Linux には2種類のカーネルがある
    • UEK (Unbreakable Enterprise Kernel)
      Oracle 社が RHEL との互換性を維持した上でエンタープライズ向けの修正/拡張を行ったカーネル
    • RHCK (Red Hat Compatible Kernel)
      RHRL と完全互換性
  • ユーザー登録を行うだけで、無料で利用することも可能
    (インストールイメージをダウンロードするには登録が必要)
  • CentOS など Red Hat 系 OS からの移行ツールが用意されている

2. CentOS 8.3 から AlmaLinux 8.3 への移行

現状、メジャーなものでユーザー登録などの必要もなく、CentOS 8の代替として利用できるものは、AlmaLinux 8 しかないと思われる。

やっと本題となるが、AlmaLinux では、CentOS 8.3 から AlmaLinux 8.3 への移行するツールが用意されている。 このツールを用いて、CentOS 8.3 から AlmaLinux 8.3 への移行を実際に行い、どのようなことが行われているか、どのような注意点があるのか確認した。


2.1. 移行ツール概要

AlmaLinux への移行ツール (almalinux-deploy.sh) については、下記に説明がある。

github.com

このツールは現在、下記RHEL系のディストリビューションからの移行をサポートしている。

  • CentOS 8
  • Oracle Linux 8
  • RHEL 8

まだ開発中とのことで、ツール実行時のログ収集機能などが TODO に上がっている。 随時更新されているようで、近々 TODO に上がっているものは、修正されると思われる。

移行だが、手順は至って簡単で下記を行うだけである。

  • 移行失敗時に備え、システムのバックアップをしておく
  • 移行ツール (almalinux-deploy.sh) をダウンロード
  • ツールを root 権限で実行
  • 移行が成功したことを /etc/redhat-release ファイルの内容と boot 時の default が AlmaLinux に変更されていることで確認

almalinux-deploy.sh*3は、 シェルスクリプトで記述されており、処理内容は以下のようなものであった。

  1. 移行元のディストリビューションチェック
    /etc/redhat-release と /etc/os-release ファイルの内容から、変換できるかを確認。
    (対象のディストリビューションか、バージョンが8.3であるかなど)
  2. ディストリビューション固有のパッケージ削除
  3. AlmaLinux 固有パッケージのインストール
    移行元のディストリビューションのリポジトリ関連パッケージ、RPM-GPG-KEY 関連パッケージ、 ディストリビューション固有の画像を含むパッケージなどを削除し、AlmaLinux のものをインストールする。
  4. インストールされている全パッケージの AlmaLinux パッケージへ置き換え
    "dnf distro-sync -y"コマンドで、全てのパッケージを AlmaLinux のものに置き換える。

以下に、man dnf(8)のdistro-syncコマンド部分を示す。

  Distro-Sync command
    dnf distro-sync [...]
      As  necessary  upgrades,  downgrades  or keeps selected installed packages
      to match the latest version available from any enabled repository.
      If no package is given, all installed packages are considered.

dnf コマンドの distro-sync コマンドは、パッケージが指定されていない場合、 インストールされている全てのパッケージに対し、必要に応じてアップグレード、 ダウングレード、または入れ替えを行い、 有効なリポジトリから入手できる最新バージョンにする。

要は移行後、移行前とパッケージのバージョン/リビジョンが異る場合があるということである。

そのため、移行によりパッケージバージョン/リビジョンが変ることが許されない 運用中システムであれば、このツールは利用できないことになる。


2.2. 移行

CentOS 8.3 から AlmaLinux 8.3 への移行を実際に試してみるために、以下の CentOS 8.3 環境を用意した。

  • KVM 上の仮想マシン
    • ハイパーバイザ:
      • ハードウェア:CPU:Intel Core-i9 3.60GHz (8 Core)、メモリ:32GB、HDD:2TB (SATA)
      • OS:CentOS 8.3
    • 仮想CPU:2
    • 仮想メモリ:4GB
    • 仮想HDD:80GB (VirtIOディスク、qcow2ファイル)
    • OS:CentOS 8.3

CentOS 8.3 のインストールは、CentOS 8.3 のインストール DVD イメージを用いて行った。 インストール時、「ソフトウェアの選択」でデフォルトの「サーバー (GUI)」(GNOME環境) を選択し、 それ以外は、ネットワークの設定しか行っていない。

ツールのダウンロード

移行ツールのダウンロードは、下記のコマンドで行う。

$ curl -O https://raw.githubusercontent.com/AlmaLinux/almalinux-deploy/master/almalinux-deploy.sh
ツールの実行

移行ツールは root 権限が必要なため、以下のコマンドラインを実行する。

$ sudo bash almalinux-deploy.sh

以下に、移行ツール実行時の出力 (抜粋、コメント有) を示す。

[root@CentOS83 ~]# bash almalinux-deploy.sh
Check root privileges                           OK     <---- root 権限の確認
Check Secure Boot disabled                      OK     <---- Secure Boot が無効になっていることを確認 (現状 Secure Boot に対応していない)
Check centos-8.x86_64 is supported              OK     <---- 移行元の CentOS (ディストリビューション) の確認
Download RPM-GPG-KEY-AlmaLinux                  OK     --+
Import RPM-GPG-KEY-AlmaLinux to RPM DB          OK       |
Download almalinux-release package              OK       +-- ディストリビューション固有のパッケージ削除と
Verify almalinux-release package                OK       |   AlmaLinux 固有パッケージのインストール
Remove centos-linux-release package             OK       |
Remove centos-gpg-keys package                  OK       |
Remove centos-linux-repos package               OK       |
Remove libreport-plugin-rhtsupport package      OK       |
Verifying...                      ####################   |
Preparing...                      ####################   |
Updating / installing...                                 |
almalinux-release-8.3-4.el8       ####################   |
Install almalinux-release package               OK       |
Remove centos-backgrounds package               OK       |
Install almalinux-backgrounds package           OK       |
Remove centos-indexhtml package                 OK       |
Install almalinux-indexhtml package             OK     --+
Last metadata expiration check: 0:00:06 ago on Thu Apr 15 07:57:08 2021.  <--- 以降、全パッケージの AlmaLinux パッケージへの置き換え
Dependencies resolved.
=========================================================================================
 Package                          Arch    Version                        Repo        Size
=========================================================================================
Installing:                       
 kernel                           x86_64  4.18.0-240.22.1.el8_3          baseos     4.4 M
 kernel-core                      x86_64  4.18.0-240.22.1.el8_3          baseos      30 M
 kernel-modules                   x86_64  4.18.0-240.22.1.el8_3          baseos      26 M
Upgrading:
 NetworkManager                   x86_64  1:1.26.0-14.el8_3              baseos     2.4 M
 NetworkManager-adsl              x86_64  1:1.26.0-14.el8_3              baseos     137 k
    :(省略)
Downgrading:
 anaconda-user-help               noarch  1:8.3.3-1.el8.alma             appstream   33 k
 python3-cups                     x86_64  1.9.72-21.el8                  appstream   86 k
 python3-requests                 noarch  2.20.0-2.1.el8                 baseos     123 k

Transaction Summary               
=========================================================================================
Install      7 Packages         <----- AlmaLinux 固有パッケージ
Upgrade    227 Packages         <----- アップグレードされるパッケージ
Downgrade    3 Packages         <----- "dnf distro-sync" コマンドでは Downgrade されることもある

Total download size: 1.2 G      <----- /var/cache/dnf に、1.2GB 以上の空きが必要
Downloading Packages:
(1/1348): anaconda-user-help-8.3.3-1.el8.alma.n 1.1 MB/s |  33 kB     00:00    
(2/1348): python3-cups-1.9.72-21.el8.x86_64.rpm 1.3 MB/s |  86 kB     00:00    
    :(省略)

「Total download size: 1.2 G」のメッセージから、ディスクに 1.2GB 以上の空き領域が必要なのが分かる。 移行のためにダウンロードされるパッケージファイルは、/var/cache/dnf 配下に置かれるため、 移行前に /var/cache/dnf が mountされているディスクに、数 GB の空きがあることを確認しておくことは必須となる。

    :(省略(つづき))
  zenity-3.28.1-1.el8.x86_64                                                    
  zip-3.0-23.el8.x86_64                                                         

Complete!
Run dnf distro-sync -y                          OK

Migration to AlmaLinux is completed

上記の「Complete!」以降のメッセージが出力されれば、移行完了となる。


2.3. 移行の結果

移行手順にある、移行後の確認方法に従い、正しく AlmaLinux 8.3 に移行されているか、 /etc/redhat-release の内容と、boot 時の default が AlmaLinux 8.3 に変更されていることを確認した。

$ cat /etc/redhat-release 
AlmaLinux release 8.3 (Purple Manul)

$ sudo grubby --info DEFAULT | grep AlmaLinux
title="AlmaLinux (4.18.0-240.22.1.el8_3.x86_64) 8.3 (Purple Manul)"

上記のように正しく移行されていることが確認できた。 確認後、システムを再起動しログインすると、GNOME デスクトップ画面が、本投稿の 最初の部分にある、AlmaLinux のデスクトップ画面に変わっていた。

移行前後のパッケージのバージョン/リビジョンの変化を知るため移行前に、

$ rpm -qa | sort > rpm-qa_sort-befoer.log

移行後に、

$ rpm -qa | sort > rpm-qa_sort-after.log

を実行しておき、パッケージのリストをファイルに収集しておいた。

移行ツール実施前のパッケージ数は 1352、移行後は 1357となっていた。 この差は、AlmaLinux の Kernel関連の 3パッケージと、理由は分からないが grub2-tools-efi と fuse3 パッケージが追加されていたためである。

追加されたパッケージを除く 1352パッケージの内 1115が、全く同じ パッケージ名 (同じバージョン/リビジョン)、227 パッケージがアップデートされており、 残り 3パッケージがダウングレード*4されていた。

以下に、移行前後のパッケージ名の比較のため、移行前後の "rpm -qa | sort" の結果を比較した結果(抜粋)を示す。

$ diff rpm-qa_sort-befoer.log rpm-qa_sort-after.log
11a12,15
> almalinux-backgrounds-81.2-1.el8.noarch           ---+
> almalinux-indexhtml-8-7.el8.noarch                   | AlmaLinux 固有パッケージ
> almalinux-logos-81.2-1.el8.x86_64                    |
> almalinux-release-8.3-4.el8.x86_64                ---+
17,21c21,25
< anaconda-core-33.16.3.26-2.el8.centos.x86_64      ---+
< anaconda-gui-33.16.3.26-2.el8.centos.x86_64          |
< anaconda-tui-33.16.3.26-2.el8.centos.x86_64          +---+
< anaconda-user-help-8.3.3-1.el8.centos.noarch         |   |
< anaconda-widgets-33.16.3.26-2.el8.centos.x86_64   ---+   | アップデートの上、AlmaLinux 対応が入ったパッケージ
---                                                        | (anaconda-user-help を除く。anaconda-user-help は
> anaconda-core-33.16.3.26-2.el8_3.alma.1.x86_64    ---+   |  パッケージ名は同じだがダウングレードの扱いとなっていた)
> anaconda-gui-33.16.3.26-2.el8_3.alma.1.x86_64        |   |
> anaconda-tui-33.16.3.26-2.el8_3.alma.1.x86_64        |<--+
> anaconda-user-help-8.3.3-1.el8.alma.noarch           |
> anaconda-widgets-33.16.3.26-2.el8_3.alma.1.x86_64 ---+
44,48c48,52
< bind-export-libs-9.11.20-5.el8.x86_64             ---+
< bind-libs-9.11.20-5.el8.x86_64                       |
< bind-libs-lite-9.11.20-5.el8.x86_64                  +---+
< bind-license-9.11.20-5.el8.noarch                    |   |
< bind-utils-9.11.20-5.el8.x86_64                   ---+   | アップデートされたパケージ
---                                                        |
> bind-export-libs-9.11.20-5.el8_3.1.x86_64         ---+   |
> bind-libs-9.11.20-5.el8_3.1.x86_64                   |   |
> bind-libs-lite-9.11.20-5.el8_3.1.x86_64              |<--+
> bind-license-9.11.20-5.el8_3.1.noarch                |
> bind-utils-9.11.20-5.el8_3.1.x86_64               ---+
53,55c57,59
< bluez-5.52-1.el8.x86_64                           ---+
< bluez-libs-5.52-1.el8.x86_64                         +---+ 
< bluez-obexd-5.52-1.el8.x86_64                     ---+   |
---                                                        | AlmaLinux 対応が入ったパッケージ
> bluez-5.52-1.el8.alma.x86_64                      ---+   |
> bluez-libs-5.52-1.el8.alma.x86_64                    |<--+
> bluez-obexd-5.52-1.el8.alma.x86_64                ---+
    :(省略)
229c229,230
< fuse-overlayfs-1.1.2-3.module_el8.3.0+507+aa0970ae.x86_64
---
> fuse-overlayfs-1.3.0-2.module_el8.3.0+2046+68fb1526.x86_64
> fuse3-3.2.1-12.el8.x86_64                         <--- 理由は不明だが、追加されていた
    :(省略)
340,345c342,348
< grub2-common-2.02-90.el8.noarch
< grub2-pc-2.02-90.el8.x86_64
< grub2-pc-modules-2.02-90.el8.noarch
< grub2-tools-2.02-90.el8.x86_64
< grub2-tools-extra-2.02-90.el8.x86_64
< grub2-tools-minimal-2.02-90.el8.x86_64
---
> grub2-common-2.02-90.el8_3.1.alma.noarch
> grub2-pc-2.02-90.el8_3.1.alma.x86_64
> grub2-pc-modules-2.02-90.el8_3.1.alma.noarch
> grub2-tools-2.02-90.el8_3.1.alma.x86_64
> grub2-tools-efi-2.02-90.el8_3.1.alma.x86_64       <--- 理由は不明だが、追加されていた
> grub2-tools-extra-2.02-90.el8_3.1.alma.x86_64
> grub2-tools-minimal-2.02-90.el8_3.1.alma.x86_64
    :(省略)
463a467
> kernel-4.18.0-240.22.1.el8_3.x86_64               ---+
464a469                                                | 追加された最新の AlmaLinux のカーネル
> kernel-core-4.18.0-240.22.1.el8_3.x86_64             |
465a471                                                |
> kernel-modules-4.18.0-240.22.1.el8_3.x86_64       ---+
:(省略)
1054c1059
< python3-cups-1.9.72-21.el8.0.1.x86_64             ---+-- ダウングレード
---                                                    |
> python3-cups-1.9.72-21.el8.x86_64                 <--+
    :(省略)
1108c1113
< python3-requests-2.20.0-2.1.el8_1.noarch          ---+-- ダウングレード
---                                                    |
> python3-requests-2.20.0-2.1.el8.noarch            <--+
    :(省略)

上記のように、移行後は多くのパッケージが更新されることが分かる。 同じ仮想マシンで、移行前に全てのパッケージをアップデートしてからも試してみたが、 それでも 150程のパッケージがアップデートされた。

やはり、運用中のシステムでパッケージのバージョン/リビジョンを気にする場合には、 本ツールの使用は難しいかもしれない。

また、下記のように移行元が CnetOS 8.2 以前だとエラーとなるため、8.2 以前のバージョンを 利用している場合、8.3 にアップデートする必要がある。

[root@CentOS82 ~]# bash almalinux-deploy.sh
Check root privileges                           OK
Check Secure Boot disabled                      OK
Check centos-8.x86_64 is supported              OK
Download RPM-GPG-KEY-AlmaLinux                  OK
Import RPM-GPG-KEY-AlmaLinux to RPM DB          OK
Download almalinux-release package              OK
Verify almalinux-release package                OK
Check OS is up to date                          ERROR
    Please upgrade your OS from 8.2 to 8.3 and retry
[root@CentOS82 ~]#

移行にかかる時間だが、全パッケージ分のパッケージのダウンロードと、 その再インストールになるため、以下に影響されることになる。 * 移行元にインストールされているパッケージの数 * パッケージの削除とインストールになるため、ディスクへの書き込み速度 * パッケージダウンロードのためのネットワークは帯域

今回の移行では、1400弱のパッケージの入れ替えとなったが、23分程で完了している *5

このあと、同じ条件の CentOS 8.3 の仮想マシンを用意し、NFS サーバーと HTTP サーバーを インストール。サービスの起動/接続の確認を行ったあと、同様の移行作業を行ってみたが、 NFS サービス、HTTP サービスも問題なく、クライアント側から使用できた。


3. まとめ

今回、KVM 上の仮想マシンに CentOS 8.3 と 8.2 をインストーして、AlmaLinux の移行ツール (almalinux-deploy.sh) を 用いて、AlmaLinux 8.3 へ移行を試してみたが、ツール自身は移行元が CentOS 8.3 であれば問題なく移行できるようだ。

ただし、かなりの数のパッケージでバージョン/リビジョンが変わってしまう。

そのため、運用中のサーバーなどでパッケージのバージョンが変わることに問題があるのであれは、 簡単に移行できないことになる。 特に、移行元が CentOS 8.2 以前であれば、工数やバージョンの管理などを考慮すると、CentOS 8.3 への アップデートの作業も加わるため、移行ツールを利用するより初めから AlmaLinux 8.3 をインストールし、 その上で環境を構築した方がよいかもしれない。

問題点や気をつけるべき点をまとめると、以下となる。

  • CentOS 8.2 以前を利用している場合、8.3 にアップデートしてからでなければ移行できない。
  • 移行は、"dnf distro-sync" による更新のため、パッケージのバージョン/リビジョンは同じにならないこともある。
  • 移行失敗時、元に戻せない。作業前にバックバックアップが必須。
  • インストール済みの全パッケージ入れ替えになるため、全パッケージダウンロード分のディスク空き容量が必要。
    (ファイルがダウンロードされるのは、/var/cache/dnf 配下。最低でも数 GB の空きがあることを確認しておくことは必須。)
  • 移行時間は、全パッケージの入れ替えになるため、インストール済みのパッケージ数とネットワーク速度に影響される。

今回、AlmaLinux の移行ツールを試したが、Oracle Linux にも移行ツールがある。こちらも、シェルスクリプトで書かれている。 実際に Oracle Linux の移行ツールも試してもみたが、やっていることは、AlmaLinux の移行ツールと変わらなかった (Oracle Linux の方が先行しているので、ツールの機能などは Oracle Linux の方が上)。

4月末に公開される Rocky Linux も同様の移行ツールを公開してくるものと思われる。

いずれにしろ、どのディストリビューションも 移行には、dnf コマンドの distro-sync コマンドを用いる (と思われる)ため、上記の「問題点や気をつけるべき点」は、変わらないことになる。


4. あとがき

本来、CentOS 8.3 を移行ツールを使って AlmaLinux 8.3 する記事の前に、CentOS 8 の代替として AlmaLinux 8 と Rocky Linux 8 の比較の記事を書くつもりでいましたが、Rocky Linux 8 のリリースが 延期されてしまっため、こちらの記事が先になってしまいました。

Rocky Linux 8 がリリースされましたら、AlmaLinux 8 と Rocky Linux 8 の比較の記事を書く 予定ですので、もう少々お待ちください。


*1:source パッケージ、debuginfo パッケージも自身で管理 (保存) しておかないと入手ができなくなる。問題発生時、解析が難しくなる可能性が高くなるため注意が必要

*2:CentOS Stream のライフサイクルは、対応するRHELのフルサポート期間 (5年間) が終わるまでとなっている。 RHEL 8 のフルサポート期間は 2024年5月末までのため、CentOS Stream 8 もそこで廃止され、 メンテナンスも終了することになる。

*3:almalinux-deploy.shの2021/4/14現在のバージョンは 0.1.7。シェルスクリプトで408行。

*4:dnfコマンドで、ダウングレードと判断されたのは、 python3-cups,python3-requests,anaconda-user-helpの3パッケージ。anaconda-user-helpは、 パッケージ名は同じだがダウングレードの扱いとなっていた。

*5:仮想ディスクは、2TB の SATA HDD 上の qcaw2 のファイルを使用しているため、 書き込み速度はあまり早くはない状態。ネットワークは帯域が 700Mbps 程度は確保 されておりパッケージのダウンロードに十分な状態。